PLA樹脂(ポリ乳酸)は、環境に優しいバイオプラスチックとして注目されています。本記事では、PLA樹脂の特徴や幅広い用途に加え、加工方法や使用時の注意点についても詳しく解説します。3Dプリンターや包装材などで人気のPLAを、理解しやすくまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
PLA樹脂(ポリ乳酸)とは?
PLA樹脂は「Polylactic Acid(ポリ乳酸)」の略称で、植物由来の原料を使用して製造されるバイオプラスチックの一種です。
トウモロコシやサトウキビなど、再生可能な植物資源から得られるデンプンを発酵させて乳酸を生成し、その乳酸を重合することで合成されます。
植物由来の生分解性に優れたPLAプラスチックの特徴
バイオマスプラスチック
PLAは、トウモロコシやサトウキビなどの再生可能な植物資源から作られています。これにより、石油ベースのプラスチックと比べて、原材料の供給が持続可能であり、環境への負荷が低減されます。
生分解性
PLAは、適切な条件下で自然に分解される生分解性プラスチックです。工業的なコンポスト施設で高温・高湿度の環境に置かれると、数ヶ月から数年で分解します。これにより、廃棄物の削減と環境への影響の低減が可能です。
カーボンニュートラル
PLAの製造過程では、原料となる植物が成長する際に二酸化炭素を吸収します。これにより、カーボンフットプリントが低く、二酸化炭素排出量の低減に貢献し、環境にやさしいです。
無毒性
PLAは人体に対して無害であり、食品包装や医療用具など、直接的に人体に接触する製品にも使用されています。また、燃焼しても有害なガスを発生しません。
優れた加工性
PLAは、射出成形、押出成形、ブロー成形、3Dプリントなどの一般的なプラスチック加工方法で容易に加工できます。特に3Dプリンターでは、低温でのプリントが可能で、収縮や変形が少ないため人気があります。
透明性
PLAは透明度が高く、美しい光沢を持っています。この特性により、パッケージングやディスプレイ製品など、見た目が重要な用途に適しています。
剛性と脆さ
PLAは比較的高い剛性を持ち、形状保持性が良いですが、他のプラスチック(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)に比べて脆い傾向があります。衝撃に弱く、割れやすい場合があるため、耐衝撃性が重要な用途には適さないことがあります。
耐熱性
耐熱性が比較的低く、約60℃以上で軟化することがあります。そのため、高温環境での使用には制約があることに注意が必要です。
PLA樹脂の用途は?
食品包装
PLAは無毒であり、食品と直接接触しても安全です。そのため、食品包装材として、カップ、容器、フィルム、トレイなどに使用されます。特に、使い捨てのレジ袋や飲料ストローなど、短期間で廃棄されるアイテムに最適です。
生分解性があるといった特徴だから、廃棄後に適切な条件下で自然に分解されやすくて、プラスチックごみによる環境負荷を軽減します。
医療用具
生体適合性が高く、無毒であるため、PLAは医療用具に適しています。縫合糸、固定具、手術用インプラント、ドラッグデリバリーシステムなど、体内に一時的に使用されるアイテムに利用されます。手術後の体内に残る必要のある部品も、PLAの生分解性を活用して時間経過とともに自然に分解される設計が可能です。
生分解性により、再手術の必要がないため、患者の負担を軽減します。また、無毒性と生体適合性が患者の安全性を高めます。
繊維製品
PLAは繊維としても使用され、衣類、カーペット、テキスタイル製品に利用されます。繊維製品は、耐久性が高く、快適性を提供します。カーペットの繊維やフィルター素材としても利用されることがあります。
自然素材であるため、肌に優しく、アレルギー反応を引き起こしにくいです。また、PLA繊維は環境に優しく、廃棄後に生分解します。
農業用フィルム・マルチング材
農業で使用されるフィルムやマルチング材としても、PLAの生分解性が役立ちます。作物を保護し、雑草の成長を抑えるために使用され、収穫後はそのまま土に残しておくことで自然に分解します。
そのメリットは使用後の除去作業が不要で、土壌への負担も少ないため、農作業の効率化と環境保護の両方に寄与します。
家電製品
PLA樹脂は、家電製品の試作や部品に利用されます。軽量で加工が容易、無毒性で環境に優しいため、設計プロトタイプやデザイン要素として最適です。ただし、高温に弱いため、実際の家電製品では耐熱性が求められる部分には不向きです。
PLA樹脂の加工方法は?
射出成形
PLA樹脂の射出成形は、溶融したPLAを金型に高圧で注入し、冷却して成形品を作るプロセスです。この方法は、複雑な形状や高精度が求められる製品の大量生産に適しています。PLAは低温で溶融するため、エネルギー効率が良く、製品の収縮も少ないのが特徴です。主に食品容器、使い捨てのカトラリー、医療用具などに使用され、生分解性を活かした環境に優しい製品の製造に貢献します。
押出成形
PLA樹脂の押出成形は、加熱して溶融したPLAを口金から連続的に押し出して製品を形成する方法です。このプロセスは、フィラメント、シート、チューブ状の製品を効率的に生産するのに適しています。PLAの低温での加工が可能な性質を利用し、エネルギー消費を抑えながら製造できます。押出成形は、3Dプリンター用フィラメントの製造、食品包装フィルム、農業用マルチング材などの製造に広く使用されています。
3Dプリンター
PLA樹脂は、3Dプリンターのフィラメント素材としてよく使われています。特にFDM(熱溶解積層)方式の3Dプリンターで使用されることが多く、低温で溶融しやすく、印刷中の収縮が少ないため、ディテールの再現性が高いです。
PLAは植物由来で無毒性なため、教育現場や家庭での使用にも適しており、簡単に取り扱えることが特徴です。試作品の作成、カスタムパーツの製造、教育用モデルの作成など、幅広い用途に対応し、持続可能な材料としても評価されています。
PLA樹脂を加工する際の注意点は?
加工温度の管理
PLAは比較的低温で溶融するため、加工温度の管理が重要です。通常、射出成形や押出成形の温度は180℃~220℃程度が適切とされます。温度が高すぎると、PLAが過熱して分解したり、変色したりする可能性があります。
冷却条件の調整
PLA樹脂は収縮率が高く、成形品の寸法精度が難しいです。冷却が急すぎると、ひび割れや変形が発生することがあります。そのため、成形後の冷却速度を適切に調整し、均一な冷却を心がけることで、製品の変形を防ぎます。また、冷却系統のメンテナンスも重要です。
湿度管理
PLA樹脂は吸湿性が高く、水分の吸収により物性が低下します。湿度に敏感で、高湿度の環境下で保管すると吸湿しやすく、加工中に気泡や品質低下を引き起こす可能性があります。使用前に原料を乾燥させることが推奨されます。
冷却ファンの設定
3Dプリンター中、冷却ファンの使用が適切でないと、PLAの層間接着が不十分になり、強度や外観に影響を与えることがあります。
特に、細かいディテールや橋梁構造の印刷時には冷却ファンを適切に設定することが重要です。
生分解性材料PHA、PCL、PBSとの違い
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)
PHA樹脂は、バイオマス由来で生分解性の高いプラスチックです。PLA樹脂と同様に環境に優しく、土壌や海洋で分解されます。PHAはPLAよりも高い耐熱性を持ち、医療用具や包装材に適しています。両者は持続可能な素材として、エコフレンドリーな製品に利用されます。
ポリカプロラクトン(PCL)
PCL樹脂は、生分解性が高く、低温で加工できるプラスチックです。PLA樹脂よりも低い融点で、柔軟性に優れ、医療用具や包装材に使われます。PCLは形状記憶性や生体適合性があり、3Dプリンターにも適しています。
ポリブチレンサクシネート(PBS)
PBS樹脂は、生分解性があり、耐熱性と強度を兼ね備えたプラスチックです。PLA樹脂よりも高い耐熱性を持ち、食品包装や農業用フィルムに適しています。
PLA、PHA、PCL、PBS素材の比較表
特徴 | PLA | PHA | PCL | PBS |
原料 | 植物由来 | 微生物発酵 | 石油由来 | 植物由来 |
生分解性 | 良好 | 良好 | 良好 | 良好 |
透明性 | 良好 | 良好 | 良好 | 良好 |
耐熱性 | 中程度 | 中程度 | 低い | 高い |
柔軟性 | 中程度 | 中程度 | 高い | 中程度 |
成形性 | 良好 | 良好 | 良好 | 良好 |
主な用途 | 食品容器、包装、3Dプリンタ | 医療用品、包装 | 包装、コーティング | 包装、繊維、自動車部品 |
まとめ
PLA樹脂(ポリ乳酸)は、生分解性が高く、環境に優しいプラスチックです。食品包装や3Dプリンティング、医療用具に使われます。加工時は温度管理と湿度対策が重要です。また、生分解性材料として、PLAは低温で加工可能で、PHAは耐熱性が高く、PCLは柔軟性に優れ、PBSは強度と耐熱性を兼ね備えています。
XMAKEでは、PLA樹脂の射出成形加工と3Dプリンター加工のサービスを提供しています。射出成形では、高い流動性と寸法安定性により、精密な成形品を実現。3Dプリンターでは、スムーズな積層と高い寸法精度を発揮し、用途に合わせた多様な造形が可能です。気になる方、ぜひXMAKEにご相談ください。